ニーカーカー:  死ぬのではないかとの恐怖が頭の中をよぎる瞬間

  人間は死ぬのを恐がります。「死に行く」「死ね」は「死=根の国に行く」「死=根」かもしれません。
植物は「根=ne」が「腐る」と死んでいます。「ne=根」腐れは「死」ですので「根の国に行く=根腐れ
死」で、「根腐れ」は同じ意味の二カ国語を並べた言葉になっています。名護方言では「喉が乾く」のを
喉が「karkin=カーキン」と言います。「ni'=喉」が「kar-kar=カーカー」スン、「ni' kar kar=ニー・カー・
カー」スンと言います。その時は「目が回る」のではないでしょうか。喉が渇いても水が貰えない状態が続く
と「死の恐怖」が「頭の中を駆け巡る」のではないでしょうか。たくさんの芋を一度に口に詰め込むと「喉が
詰り」ます。名護方言では「ni' kunzin=ニー・クンジン」ト言います。 相手に「喉が詰っているの」と聞く時
には「ni'lu=ニール」「クンジ・トゥン・ナー」と聞きます。大宜味村の塩屋出身の方に尋ねたら、その時にも
「ni' kar kar=ニーカーカー・スン」と言うと言っていました。 「ni'=ne=根」の国に行くのではないかと「恐怖」
に駆られたのではないでしょうか。川は川原とも言います 沖縄方言では「kar-ra=カーラ=川」です。「kar」の
音は「水」や「恐怖」と関係があるようです。そういえば「kara-su=烏」は「不吉」な鳥と言われています。烏の
鳴き声は注意して聞くと「アー」であって「カー」ではありません。「不吉な意味」を含める為に「kar-rasu=烏」
と名付け、その鳴き声を「kar kar=カーカー」と聞こえる事にしたと思われます。烏が鳴くとその後暫くしてから
不吉があるのではなくて、「鳴いた直ぐ後」に「不吉」が起ると考えられています。私は一度だけその経験をして
います。私が小学4〜5年頃に近所の中学高学年の人がリーダーになりナングスクの裏山に薪を取りに行った時に
烏の鳴き声が聞こえたので、誰かが気を付けようと言ったと同時に「ギャー」という音が聞こえました。リーダーの
一人の腰に吊るしていた斧が落ちてその人のアキレス腱辺りに落ちて大けがをしてしまいました。直ちに薪取りは
中止してお家に帰った思い出があります。「根の国」根は沖縄方言では「ni'=二ー」ですが、「ni'」の音も恐怖を
表す音です。怖い時には「胸=ni'」がガタガタする、二―ガタガターすると名護方言では言いますが、スメル語を
学ぶとこの「ni'=ニー」は胸だけでなく「ni'=恐怖」も表していると思うようになりなます。「恐怖=ni=ニー」に
「ガタガタ」震えるのは当然でしょう。真っ暗闇は誰でも「怖い」でしょう。「ni=光る」方向は暗闇では分り易い
ですが、「ニー・ヌ・ファ=北」が恐いのは「ni=恐怖」が含まれているからではないでしょうか。「北風」が吹く
頃は「危なくて怖い」季節です。「真北」からの風を沖縄方言では「mi'-ni-si=ミーニシ」と言い、死んだ人は
「ni-si=ニシ」枕ににします。「死」も恐いですが、「ni=恐怖」は恐怖その物です。「nisi=ニシ」は恐怖を
表す二種類の言葉を並べた言葉だと分ります。「真北からの風=ミーニシ」に恐怖を表す「ni=恐怖」と「si=死」
が含まれいるのは当然でしょう。生きている人に「nisi=ニシ」枕はいけないと言うのはスメル人の考え方でしょう。

 スメル語では次の通りです。

  NI KAR = (恐怖が頭の中を)駆け巡る、グルグル回る、英語では to circle around, to circle

  NI = 恐怖、英語では fear

  KAR = 突然の攻撃、急襲、不慮の災害、精神的打撃、英語では blow