ピヂとピヂェー: 肘と左

  名護方言では肘は「pidi=ピヂ」で、左は「pidie’=ピヂェー」です。肘がピヂに
なるのは直ぐに推測できますが、左がピヂェーになる理由が分りませんでしたが、
アッカド語の「外側に出る、外側に出ている」状態を表す言葉が「idu」行音で表さ
れるのを知りやっと「pidie’=ピヂェー」の語源が分りました。左利きの名護方言は
「pidie’=ピヂェー」「ルー=lu’」です。左利きは「左」の「腕や手」を使います。
左利きの人は食事の時や字を書く時には右を使うように子供の頃から躾けられて
いる場合が多いですが、急な時、いざとなったら「左手」を「出す」でしょう。水道の
水が出るのやスポーツ競技に出る、参加するのを名護方言では「idin=イヂン」と
言います。 腕の動きを見ると真っ直ぐ伸ばしている時には気づきませんが、腕を
曲げると「hidi=肘」が「突き出る」のが分ります。「p-idie=ピジェー=左」の「p」
の音は安否の「否=pi」と同じで「p=pi=否、非、不」などを表す接頭語でしょう。
「力の弱い=悪い=pi=p」の「idu=腕」が「p-idu → pidie'=弱い腕」と解釈出来
ます。競走で「一番遅い人、最後尾の人」を名護方言では「pi'=ピー」「クス=糞」
と言います。

 アッカド語とスメル語は次の通りです。

 idu    = 腕、羽、角、側、子が出る(生む)、外に出て働く、賃金や力(が出る)
          知っている、知らせる、認める、公表する、アッカド語
          英語では arm, wing, horn, side, labor, wage, power, to know
           to let know, to identify, to acknowledge, to announce

 la idu  = 知られていない、知っていない、アッカド語、英語では unknown

 LU = 人、スメル語、英語では person